対象:100Lクラスの冷蔵庫を使うご家庭(一人暮らし向け)。
停電時に「何時間もつか」と「手持ち(または検討中)のポータブル電源でどれくらい耐えられるか」を計算機と早見表で素早く把握できます。
所要時間:3〜5分(計算のみ)/10〜15分(全体)。
※「連続運転時間」は一般に“ランタイム”と呼ばれる指標の言い換えです。
先に結論(3点)
- 連続運転時間は見積もり用の計算式(安全マージン込み)=(実容量Wh × 0.68) ÷ 平均Wで算出します。※0.68は変換ロスや環境差、予備を見込んだ係数です。
平均Wは本体ラベル(定格表示)などにある「年間消費電力量(kWh/年)」から年間kWh×1000÷8760で自動換算できます(下の計算機対応)。 - 100Lクラスの平均W(平均消費電力)の目安は15〜30Wです(冷蔵庫の自動制御による運転のオン/オフを含む実用的な範囲)。機種・室温・庫内の量で前後します。
注:最新の省エネ機では、下記の代表レンジより小さい値になる場合があります。お手元の機種は「年間消費電力量(kWh/年)×1000 ÷ 8760」で平均Wに読み替え、本表を上書きしてください。 - 運用と安全のポイント:扉の開閉は最小限に。保冷剤・凍らせたペットボトルを活用し、設定温度は控えめに微調整しましょう。

実装手順(5ステップ)
1) 平均Wを把握する
年間消費電力量(kWh/年)が分かる場合は、平均W ≒ 年間kWh×1000 ÷ 8760。
手元になければ下の 連続運転時間クイック計算機で「年間消費電力量から算出」を選べば自動計算できます。
100Lの平均W目安は15–30Wです。
実測で確認する(任意:スマートプラグ/ワットチェッカー)
- 計測機能つきスマートプラグまたはワットチェッカーを使用し、6〜24時間の平均を取ります(開閉回数や周囲温度で変わるため)。
- 製品は定格15A/1500W・誘導負荷対応を必ず確認。タコ足や劣化コードは使用しないでください。
- プラグ根元の焦げ・ホコリ(トラッキング)があれば清掃・点検後に実施します。[1]
W=V×A×力率(PF:電気の使い方のクセを表す係数)で変わります。家庭用の電動機器ではPFはだいたい0.7〜0.9。迷ったら本記事の見積もり用の計算式(安全マージン込み)で評価してください。
2) 電源スペックの確認
- 公称容量(Wh)/定格出力(W)/サージ出力(瞬間最大, W)/出力波形(正弦波)を確認してください。
- 冷蔵庫は始動時に突入(起動)電流がかかり、平常の2–6倍になることがあります。
始動方式や条件によっては6倍超となる例もあるため、定格・サージに余裕を持たせて選定します。
3) 設定温度の考え方(具体レンジ)
平時は冷蔵4℃前後・冷凍室−18℃以下。
非常時は「冷蔵10℃以下/冷凍−15℃以下」を上限に、庫内温度計で確認しながら微調整します。
温度と計算の基準(非常時の目安)
※メーカー個体差や周囲温度で実温度は変わります。温度計で庫内実測を。
4) 連続運転時間を計算する(見積もり用)
基本:(実容量Wh × 0.68) ÷ 平均W(安全マージン込み)
上限確認:(実容量Wh × 0.85) ÷ 平均W
5) 停電中に長持ちさせるコツ(行動リスト)
停電中は運用で連続運転時間が変わります。
まずは基本の3つと停電前の準備、最後に使用中の安全チェックの順で確認します。

基本の3つ
30秒チェック
- 開閉は 1時間0〜1回/1回5〜10秒
- 保冷剤は上段+中央〜奥。通気口・温度センサーはふさがない
- 温度は一段弱め+断続運転 (30分オン→30〜60分オフ、冷蔵10℃以下/冷凍−15℃以下)
① 扉の開閉を最小化する
- 目安:1時間あたり0〜1回、1回は5〜10秒以内が扱いやすいです。
- コツ:取り出す物をまとめ取り/在庫の位置メモを外扉に貼って迷い時間を減らします。
- 理由:開閉で庫内温度が上がると、戻すための電力が増えます。
② 保冷剤・凍らせたペットボトルを入れる
- 配置の工夫:
- よく使う物はドアポケットへ。痛みやすい食品は庫内の中央〜奥へ移し、温度の安定した場所に置きます。
- 保冷剤・凍らせたペットボトルは上段と中央〜奥に分散配置すると、冷気が安定しやすいです。
- 吹き出し口・吸い込み口、温度センサーや庫内灯の周りはふさがないようにします。
- 量の目安:空きスペースを軽く埋める程度にしてください(詰め込みすぎは避けます)。
- 結露の対策:保冷剤や凍らせたペットボトルは受け皿(トレイ)にのせるか、薄いタオルで包むと安心です。タオルが濡れてきたら取り替えます。
③ 温度設定は控えめにして、断続運転を使う
- 設定:ダイヤルは一段弱め(急冷・急凍はオフ)。
- サイクル例:30分オン → 30〜60分オフを繰り返します。
- 温度の基準:庫内温度計で冷蔵は10℃以下/冷凍は−15℃以下を目安にオン・オフを決めます。
※数値は目安で、機種や周囲温度で変わります。[3]

補足:停電前の準備を整える
- 貼る:献立や在庫メモを外扉に。飲料・調味料はドアポケットへ集約します。
- まとめる:使う予定の食材は手前に集めると、開閉時間を短くできます。
- 作り置き:保冷剤/凍らせたペットボトルをあらかじめ用意しておくと立ち上がりが楽です。
使用中の安全チェック
- 直結が基本:できれば壁コンセントへ直結。延長コードは定格に余裕がある物を使い、たこ足は避けます。
- 目視点検:プラグ根元に焦げやホコリ(トラッキング)がないか。あれば使用を中止します。
- 発熱の確認:運転中にコードやプラグが熱くないか、ときどき触れて確かめます。熱いと感じたら中止します。
- 水気を避ける:コンセント周りの水・結露を拭き取り、濡れた手で触れません。

プラグ根元の焦げ・ホコリ(トラッキング)を使用前に点検。
100L冷蔵庫の連続運転時間:計算ガイド(計算式の選び方・計算例・早見表)
計算式の選び方
- 見積もり用の計算式(安全マージン込み/推奨):
(実容量Wh × 0.68) ÷ 平均W= 連続運転時間[h]
はじめての試算/計画段階/機種差や気温のブレを見込みたいとき。迷ったらこちら。下の計算機では初期値のまま(変換効率=0.85、安全マージン=0.8で)計算してください。 - 理論上の計算式:
(実容量Wh × 0.85) ÷ 平均W= 連続運転時間[h]
最良条件での上限確認に。電源に大きな余裕がある場合のみ参考。下の計算機では計算結果の下に「理論値」として表示しています。
表の読み方
- 手元にあるほうでOK:「年間消費電力量(kWh/年)」または「平均W」を用意。
換算の目安:平均W ≒ 年間kWh×1000 ÷ 8760 / 年間kWh ≒ 平均W×8760 ÷ 1000(下の 連続運転時間クイック計算機で自動換算) - 表の「平均W(年間消費電力量の目安)」の行と、使う電源の「容量Wh」の列が交わるセルを見る。
- 表示時間は見積もり用(安全マージン込み)の目安。
実際の時間は個体差・室温・庫内の詰め具合で変動します。「冷蔵10℃以下/冷凍−15℃以下」の維持を温度計で確認してください。[3]

年間消費電力量(kWh/年)は平均Wへ自動換算。
連続運転時間クイック計算機
注:早見表は 500/1000/1500Wh 表示です。2000Whクラスは 1500Whの約1.33倍の時間が目安(同じ平均W)。
早見表(安全マージン込み)
例:平均22W × 電源容量500Wh → 約15.5時間(安全マージン込み)
| 平均W(年間消費電力量の目安) | 電源容量500Wh | 電源容量1000Wh | 電源容量1500Wh |
|---|---|---|---|
| 15W(約131kWh/年) | 約22.7時間 | 約45.3時間 | 約68.0時間 |
| 22W(約193kWh/年) | 約15.5時間 | 約30.9時間 | 約46.4時間 |
| 30W(約263kWh/年) | 約11.3時間 | 約22.7時間 | 約34.0時間 |
例題でかんたん確認
例1:500Wh × 平均15W
連続運転時間(見積もり) ≒ 500 × 0.68 ÷ 22 = 15.5h。
夜間は通電し、扉の開閉を最小化すれば、翌朝まで保冷できる目安です。
温度基準(冷蔵は10℃以下/冷凍は−15℃以下)は庫内温度計で必ず確認してください。[3]
例2:1000Wh × 平均30W
連続運転時間(見積もり) ≒ 1000 × 0.68 ÷ 30 = 22.7h。
氷・保冷剤の活用と扉の開閉を最小化して平均Wが下がれば、断続運転で24時間前後まで伸びる場合があります。
(目安:平均28W → 1000 × 0.68 ÷ 28 = 約24.3h)
運用時は、温度基準(冷蔵は10℃以下/冷凍は−15℃以下)を満たすか、庫内温度計で必ず確認してください。
(参考:理論値=1000 × 0.85 ÷ 30 = 約28.3時間)
※ 表示は安全マージン込みの目安です。実際の連続運転時間は、機種差・周囲温度・庫内の詰め方・開閉頻度などで上下します。
よくある疑問(FAQ)
Q1. 100Lと200Lでは、連続運転時間にどれくらい差が出ますか?
A. 一般に小型(100L)の方が平均Wが低く、同じ電源容量でも長く持ちます。
代表レンジを 100L=15–30W、200L=25–45W とすると、たとえば――
- 500Wh の場合
100L:約22.7–11.3時間(15W–30W)
200L:約13.6–7.6時間(25W–45W) - 1000Wh の場合
100L:約45.3–22.7時間(15W–30W)
200L:約27.2–15.1時間(25W–45W)
同じ容量の電源でも、平均Wが低いほど長く動きます。
平均Wは機種差・室温・庫内の詰め方・扉の開閉頻度で上下するため、事前の短時間テストをおすすめします。
(※表示は変換ロス+安全マージン込みの目安です)
Q2. 冷蔵庫の起動時の電流(突入電流)で、電源が止まったりしませんか?
A. 正弦波出力で、定格とサージ(瞬間最大)に十分な余裕があれば動くケースが多いです。
始動時は平常の2–6倍になることがあるため、定格出力・サージ出力に余裕を持たせて選定してください。
Q3. 断続運転(オン・オフを繰り返す使い方)は使っても大丈夫ですか?
A. 使えます。温度基準を守れることが前提です。
目安として「30分オン → 30〜60分オフ」を繰り返し、庫内温度計で冷蔵は10℃以下/冷凍は−15℃以下を確認します。扉の開閉は最小にし、食材の状態に不安があるときは中止してください。[3]
Q4. DC直結(ACアダプタを使わず直流でつなぐ方法)の方が効率は良いですか?
A. 対応機器に限ればロスが少なくなる場合がありますが、家庭用冷蔵庫の多くはAC機器です。対応表示のない家庭用冷蔵庫をDC直結で使うのはおすすめしません。
通常は正弦波ACで、定格に余裕をもって給電し、発熱やプラグ根元の焦げ・ホコリ(トラッキング)がないかを確認する運用が安全です。
※車載/ポータブル冷蔵庫などDC対応機器は、メーカー指定の電圧・極性・ヒューズに従ってください。
Q5. 年間消費電力量(kWh/年)だけ分かっています。平均Wにはどう読み替えればよいですか?
平均W ≒ 年間kWh × 1000 ÷ 8760 で概算できます。
ページ内の 連続運転時間クイック計算機で「年間消費電力量(kWh/年)から算出」を選ぶと 自動で平均Wに換算されます。
メモ:ラベルやカタログの「年間消費電力量」は本体ラベル(定格表示)等で確認できます。
次の行動
参考・出典
- 補足資料(衛生管理の背景情報・業務向けガイド) :HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書|厚生労働省 /小規模一般飲食店向け手引書|厚生労働省 ↩︎
- 平時の適温(冷蔵4℃前後/冷凍室−18℃以下) :冷蔵庫のかしこい使い方〜知ってお得な食品の保存|農林水産省 ↩︎
- 非常時の上限目安(冷蔵庫10℃以下/冷凍庫−15℃以下) :細菌・ウイルスによる食中毒|消費者庁 ↩︎
- 年間消費電力量(kWh/年)が公表値であること(JIS C 9801に基づく測定) :電気冷凍庫|トップランナー|経済産業省 資源エネルギー庁 ↩︎
- 力率(PF)の考え方(有効電力の割合) :契約電力の決定方法(実量制)|東京電力エナジーパートナー ↩︎
医療に関する内容は一般的な情報であり、医療的助言ではありません。 医療機器の選定・運用・停電時の対応は、主治医・訪問看護・機器提供会社の指示に従ってください。 UPSの切替時間(ms=ミリ秒)やDC直結の可否は必ず公式仕様をご確認ください。
市販ポータブル電源の「UPS/EPS/バススルー」は多くが瞬断(数十ミリ秒程度)を前提としており、無瞬断を保証するものではありません。機器によっては再起動・誤作動・故障のリスクがあります。生命維持・治療継続が必要な機器については、メーカーが案内する純正または推奨の外部電源・バッテリー・無停電電源構成の利用を検討してください。
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